十一面観音菩薩尊像建立

有田郡清水町杉野原・雨錫寺・河津明神

本多碩峯

十一面観音菩薩尊像(昭和58年八月建立)

施主:本多碩峯
施工:阪神石材株式会社
住所:尼崎市建家町30番地
電話:06-412-3921

ふる里の泉「有田の民話集」鳥居 勝著より

河 津 明 神

 杉野原に平野地という場所があり、ここに福蔵寺というお寺があって、その寺屋敷といわれ石碑などが残っている。
 むかしここに大きな農家があり一人の娘がいた。この娘は大変器量よしで、近所でも評判であった。するとよにもまれなる美男子が夜遊びに来たのである。
 一目ぼれというか、ボーとのぼせてしまい、このおとこなしでは、となってしまった。それから毎夜毎夜を待ち、身も心もとける愛欲にふけたのである。
 始めのうちは、親等も気付かなかったのだが、次第にふくらんでいく腹を見ては、母親は黙っておれず、娘に問いただした。娘は無言でうつむいていたがどうせ隠せきれないものとその真相を明らかにした。
そこで母親は「それならば致し方なし、娘にもらってもらわねば」とその男の名前や住所をなど聞いたのだが、これだけはどうしても言わない、と言うよりも娘も知らなかったのである。
 そこで母親は娘に知恵をつけ「今夜着物の裾に糸をつけておけ。そして帰りにその糸を延ばしなさい」
むすめはいわれたとおりにして、翌朝、その糸を頼りに、訪ねてみると、不思議なことに、河津の滝の滝壺に入っている。これはてっきり滝の主大蛇のいたずらと、あわてふためいたが、もう遅い。腹の子供は日に日に大きくなり、蛇の子をたらい一杯産んだらしい。
 蛇の子を産んだという事は、娘にとって全くの苦痛であり、河津の滝に身をなげ、大蛇の許へ行ったそ
うであるこの娘を愛しく思った親や兄弟は河津明神を祀り、冥福を祈ったそうである。この河津明神社は、明治四十年に八幡神社に合社したのだが、ご神体の一部をここに残し今尚祀っている。
 ところが、不思議な事に合社するまで、社裏の石垣の穴という穴に、ぎっちり蛇が住んでいたそうだが、それがすっかりなくなったと言われている。と同時にもう一つ不思議な事に、大正の頃、正月のお供えものをしたとき、一部残していた神体に蛇が巻きつき、それがそのままミイラとなっていたのにきづいたそうである。戦後めっきり朽ちてきたお社を建て直して、立派なお社が出来たので、神体のお移しが古式にのっとり夜半行われた。その時、やはり、ミイラとなった蛇が残っていたそうである。なお古い社をこわした際、天井裏から古刀二本と、棟札四十枚出てきたそうである。何分、夜半の事とて詳しく見ていないそうだが、承徳年号(平安後期)の棟札もあったという事である。
 この話は有田では最も有名な伝説の一つである。しかしある人はこの河津の滝の主という美男子は実は発表の出来ない身分の高い人であり、河津明神はその娘を囲った館ではなかったかと語っていた。湯川のイロンドの滝伝説と全く同じであり、これも平惟盛につながるのではなかろうか。



短 歌


 郷里の一切に感謝の思いに発心し、当時妻と初めて詩に触れ、建立前夜に喜び溢れ出た詩であります。今も、郷里の観音講が毎月の18日に御詠歌の中に、私達の詩をもお供え頂いています。


                      観世音 天にとどけと 集まりし            翩翻として 御空にと舞う


                       杉野原 願う心は かろくとも       観音さまの おもき雨錫寺


                      杉野原 宇宙に満ちて 観世音         われら子孫の 栄え泰産


                      信心の浮かぶ 観音癒されし     朝のおつとめ 栄えあるなん


                      晴天に 甘露の法雨 注ぎ給う         観音妙智 名も雨錫寺


                     富める水 何千年の 有田川       悲しくもあり ただ感謝のみ


                     清き水 流るゝ里に 雨錫寺の          皆を守るらん 観世音さま


                     清き水 導き給へ 観世音    高野の峯を 清め給う


                      山里に 杉の木立を      子らとともに 守りし心観世音


                      うれしいなあ ありがたいなあ たのしいなあ   あなた観音 あたし観音


                     晴天に法雨いただき観世音    みなは妙楽雨錫寺に立つ


                     古里に十一面観音        村人たちに楽を与えん


                      孫の手を杖つく足に若返り       栄え富まん常楽の園


                      我が祖先見えず聞こえずその顔を   子孫に写す観世音さま


                       観世音 迷いの心 取り払い      拝みて みなは 妙楽の園


                     観世音 つとめし しごと 霊界に             極楽浄土 願い立つなん


                      縁結び 男女(みな)の喜び 秋葉山                   祈りし心 観世音さま


                     

子供なき 夫婦二人し 吾が子孫                 神に守られ 古里にたつ


                      伝説の 悲恋の霊 河津神           心に秘めた 高野の ふるさと


                      吾がこども 幸多かれと 祈る今            願う心に 晴るゝ うれしさ


                      秋葉山 心やすらぎ 集まりて              いつも 微笑む 観世音さま


                     

三つ四つ 子らを手に 泰産を                     願う心に 栄えし園


                      村人に 幸多かれと 泰産を          祈りし神の 観世音さま


                     秋葉山 吾れ道なりと 観世音             われら子孫の 富し拝まん


                       郷土の 御田舞に 里帰り            いつもききし 観世音さま


                       杉野原 子らを守りて 観世音              願う心の すこやかなりき


                     杉木立ち いまは望みも 雨錫寺の               庭に建てりし 子らを守りて


男女(みな)むすび よろばし身に    泰産を 御子こもらさん 観世音さま


                      みなともに 甘露の法雨 高野山        ふるさと栄え 吾等観音


                       むすび男女(みな )ともに父母        月も日も 願う心に 晴るゝうれしさ


                       杉の原 守りし姿 観世音      登りし手に よろこびの玉


                      いでいるや 谷間の月を 雨錫寺の           鐘のひゞきに 心やすらぐ


                      ふるさとを 思う心は 秋葉山        小鳥さえずる 妙楽の園


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